自宅のように自由に生活をしたいが、食事や何らかの手助けは求めたい、しかし、施設のように規則に縛られて生活したくない。この様な要望は、当然発生してくるものだ。諸外国の例を見ると、65歳以上の高齢者で、施設で暮らしている人はおおよそ4%、高齢者住宅で暮らす人は4−5%程度。約90%の人は自宅で暮らしている。障害をもつ人(高齢者の18%程度)でみると、約半数が自宅で暮らし(50%)、残り半数のうち、25%が施設で暮らし、25%が高齢者集合住宅で暮らしていることになる。
日本の場合、障害を持つ高齢者の25%が施設で暮しているのは諸外国と同じだが、残りの大部分が、自宅で暮らしている。障害を持ち自宅で暮らすことは、介護者の存在を前提としているので、施設への入居希望者が増加する。しかし、日本の施設の割合は、おおよそ他の諸国と同じなので、高齢者の増加以上の割合で施設を増やす必要はなく、むしろ、高齢者集合住宅の整備が必要なのだ。
高齢者の住まいに対する政策は、厚生労働省(旧厚生省)と国土交通省(旧建設省)とに分かれて推進されてきた。厚生省は、戦前からの養老院、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、ケアハウスなど、救貧的、医療・介護的な側面を重視している。これに対して、建設省の場合は、老人世帯向け公営住宅、シルバーハウジング、シニア住宅など、小規模な比較的安価な住宅の提供だった。介護保険以降は、有料老人ホームが増加し、それと同時に、無許可の高齢者住宅も増加した。2006年度より、2人以上が住んでいて、一定の援助を行なっている施設すべてが、有料老人ホームとしての届出が必要となった。国交省側では、高齢者円滑入居賃貸住宅(高齢者を断らない住宅)の機能向上住宅として、高齢者専用賃貸住宅(以下高専賃)が生まれた。
厚労省の有料老人ホームに関する届出は、高専賃のうちで、居住性の高いもの(1室あたり25m²以上の居住面積を有するもの)については、高専賃の届出のみで、有料老人ホームの届出は不要だ。さらに、有料老人ホームから除外された高専賃のうち、適合高専賃の届出によって、将来的に、特定施設の指定を受けることが出来ること、住居地特例を受けることが出来ることなどが決められた。高専賃は、住まいとしての高齢者住宅を標準化するもので、今後の発展が期待される。しかし、監督官庁の姿勢が明確でなく、諸外国と同様に、高齢者にとって最も重要な住まいについて、脱施設化を行なうのか、特別養護老人ホーム的な施設を今後も建設していくのかについて、明確にメッセージを発するべきだ。高専賃を特定施設化して、介護保険をつけるのでは、有料老人ホームの焼き直しになる。デイサービスを併設したり、訪問介護事業所を併設したりすることによって、有料老人ホームと変わらない施設になってしまうのだ。

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株式会社メッセージ代表取締役。医学博士。昭和23年9月、岡山市生まれ。 同48年、岡山大学医学部卒業。研究領域は外科学、免疫学、老年医学、老年看護学、老年学。アミーユブランドで現在、全国に有料老人ホーム・高専賃を展開中。
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